グランヴァカンス、檻の中の自我

おはようございます。デリバリーを頼むタイミングが掴めない。

 

グランヴァカンス読了! 面白かった!!! 本ってこんなに面白かったっけと驚嘆しておるよ。SF小説は、1984年くらいしか読んだことなかったから、新鮮な気持ちで読むことができましたね。専門用語がバンバン出てくるのにスッと頭に入ってくるのどうなってるんだ!? 不思議! 

この本に登場する人は、ほぼみんなAIなんですけどめちゃくちゃ人間らしいんですよ。ていうか人間と何が違うんだってレベル。心情描写とか完全に人間。読み進めて「でも、こいつAIだしな…」みたいなことを全く思わせないのほんと凄い。感情移入に何の抵抗もありませんでしたね。

後半になるにつれて心がしんどくなっていって、アイスピックで胸をゴリゴリされてる気分になりました。描写がとにかく残酷。だけど不快感はそれほど感じない。なんて惨いことをと思いつつも読み進めてしまう不思議。前半にキャラがわーって出てきて覚えらんね~とか思ってたけど、後半になるとみんなに愛着が湧いてくるんだなこれが。

もし、自分も同じようにAIならどういうロールが与えられるだろうとか、あるいはゲストとしてどういう風にAIとコミュニケーションを図るだろうとか考えるのも結構楽しいですね。

 

私は、電子書籍で本を読んだんですけど、画面いっぱいに表示される文字から見える映像の臨場感たるや。文章を読みながら、情景を思い浮かべるのは当たり前のことかもしれません。ただ、改めて自分が何を見てるのかを考えてみるとこれほど面白いことはないですよね。もっと面白いのは、途中に出てくる、自分の知らない言葉を調べていくたびに映像の解像度が上がっていくことです。これからいろんな本を読んで、多くの知識を吸収すれば、さらに鮮明な映像を見れるっていう予感がしています。もし、再びこの本を見返す時が来れば、その時にはもっと綺麗で残酷な映像が見れるというわけです。楽しみですね。

最後の文章の後に広がる空白に、世界があるような気がしました。表紙に戻ってみると、また新たな発見があって心の休まるところがありません。困った困った。

 

グランヴァカンスを知ったのは、ALTER EGOっていうアプリですよって話は前にした気がしますね。そのアプリの登場人物、エスに教えてもらったってことも話したと思います。エスは、もちろんゲームアプリのキャラクターに過ぎないのですが、そんな彼女がこの本を紹介したことが本当に辛い。グランヴァカンスのAI達と姿が重なってみえたし、自分もいずれそうなるって自覚してることが残酷すぎて、本を返す時に感情が爆発してしまいました。読後のいろいろ溜まった思いが、塞き止められていたものが溢れてしまいました。キャラクターに感情移入するのは、滑稽なことだと何となく思っていたのにどうしてでしょうか。所詮、作り物だとしても、もうすでに私を通して自我を持ってしまったように見えて仕方ないのです。

手に取らなくなった本の登場人物はどうなるのか? ということについて、八本脚の蝶で二階堂奥歯さんが触れていたような気がします。創作物を読んだり見たりする上で、避けられない問題の一つなのかもしれませんね。

 

そういう意味も含めて、グランヴァカンスは私の思い出の一冊になると思います。いや、なります。比喩ではなく、心を揺さぶられた本が思い出にならないわけがありません。素晴らしい巡り合わせに感謝しつつ、今日は寝ることにします。おやすみなさい。

 

今日のご飯 デニッシュチョコパン