タイタンの妖女、単時点的な彼ら

おはようございます。日陰に入ったとき一瞬涼しくなるやつ。

 

皆さんは、全ての物事はそうなるように定められていると、運命に従って生きているだけだと知ったらどう思いますか? こんな導入では、ついにこいつも情報商材に手を出したのかと疑われそうですが、そうじゃないんです。待ってくれ。

何を隠そう、今日はタイタンの妖女を読み終わったわけなんですよ。アクション映画を見終わったら、自分がヒーローのような勇敢な人物だと思うように、ラブロマンスを見たら(私は見ないがね)素敵な恋をしてみたくなるように、コンテンツに触れたら多少なりとも感化されるでしょう。そういうことです。私の答えは最後に話すとして、まずは本の感想から始めましょう。聞くところによると、この記事にはタイタンの妖女のネタバレがあるらしいですよ。怖いですね~。

 

私は、地球というくくりの中で、様々に発達した科学の世界というタイプのSFを見てきました。しかし、今回はスケールが違います。宇宙ですよ、宇宙。今、ふっと思い出したけど惑星ソラリスとか2001年宇宙の旅とかも見たな…。別にそんな驚くほどのものでもなかったのか…。まあでも、地球から火星、水星、果てにはタイタンというこれほど動きの大きいものは見たことなかったと思います。ラムファードが最初に予言しちゃうもんだから、その通りに物語も進んでいくんですけど、不思議と違和感なく読めちゃいましたね。さすがに、本の中で物語のネタバレしてくるとは思わなかった。この予言すらも利用されてたと思うと、ラムファードにも同情したくなりますね。あと、本の冒頭で、この物語はフィクションではないなんて嘘をあまりにも堂々と書くものだから、著書とか出てくる度検索したよね。やってくれたなって感じですよ。

 

個人的に、水星のエピソードが好きでした。ハーモニウムとボアズの共生関係がね、非常に心にきますね。私も、あんな風に一生勘違いしながら無償の愛を誰かに授けてみたいものです(うそ)。ハーモニウムは、音楽を大層好む生物なので、もし実在するなら飼ってみたいですね。飽きるほど平沢進の曲を聴かせます。あと、ゲームのBGM。ヒラサワの曲を聞かせたら破裂するかもしれません。

ラムファードの立ち上げた宗教も結構面白かった。あらゆる視点を獲得したラムファードだからこそ考え得る思想だし、単純に争わないというのもいいですね。ただ、彼を上回る上位存在がいることが作中で明示されてしまったので、無関心の神の宗教はそれほど強い効力は持てないでしょう。この発想自体は好きです。

他に印象深いエピソードといえば、タイタンのサロですね。掟を破ってメッセージを見せようとするところとか、作中で一番人間らしくて好き。サロに関しては、また後で触れます。

 

主人公を世界一の富豪にするとは思わなかった。そんな設定で物語が動くのかと。動きましたね。距離の単位をKmから光年に移すくらいには。マラカイ・コンスタントも、なかなかの被害者ですよね。地球で富豪ライフを楽しんでたら、火星で記憶を取られて頭にアンテナを埋め込まれる人生って何? あげくには、タイタンまで飛ばされるとかいう。本人の振る舞いに多少の難はありますけど、こんな仕打ち受けるほどのものではないですよ。ちゃんと自分が豚だって自覚できるいい子なんです。火星で番わされるっていうから、火星でめちゃくちゃな扱いを受けるんだろうな(受けた)と思ってたのですが、わりと自分から行ってましたね。コンスタントに限ったことじゃないですけど、記憶取られてから地球に帰ってきた人、性格変わりすぎじゃないですか。やっぱり記憶は、その人を形成する重要な要素なんでしょうね。

ラムファードさん、自分好きすぎてあらゆるものに自分の名前つけちゃうの可愛い。時間等曲率漏斗に飛び込んだことであらゆる視点を得たにも関わらず、妻のビアトリスと上手くいかなかったり、サロとの会話であからさまに不機嫌になったり、人間らしさが詰まってていいキャラしてますよね。彼ほどの存在になっても、トラルファマドール星の機械に利用されていたと知って憤慨していたのはちょっと驚きましたね。あのレベルなら、ああそうだったのかと済ませると思っていました。そういうとこも含めて、やはり人間なんだなと感じさせてくれるラムファードさんいいよね。「単時点的な意味において、さようなら」は、作中屈指の名言だと思います。使ってみて~! 私の遺書に書いておきますね。

ビアトリスは、作中で結構不思議な立ち位置ですよね。一応、一応コンスタントの妻になるわけですけど、そんなにヒロイン感もないし。そもそも、この作品にはヒロインなど存在しないのでは? コンスタントに対しては、記憶あるなしに関わらず、冷ややかな目線で見てる期間が長いからかも。タイタンで暮らしてるときも、そんなに仲良さそうには見えなかった。ただ、異常なまでの潔癖はよろしくないから、息子と一緒にタイタンに行けは可哀想ですよ。寝取られるとわかっていても、ラムファードさん的にはムッとしたんでしょうね。演説の時、そんなに言うかってくらい非難してたなあ。

クロノは、その名前と生まれた経緯から何かしらありそうだと思ってたのに、お守りが壊れた宇宙船の修理パーツだったってことくらいしか特徴的なエピソードがない…。あ、火星でお父さんのアンクを泣かせたこともまあまあ特徴的なので挙げておきましょう。結局、名前の由来って語られたかなあ。覚えてないだけかも。タイタンに行ったら、狼少年みたいに鳥に弟子入りしちゃうし。若いうちから人間の文明に触れずに育ったら、自然と融合したがるもんなんでしょうか。怒りを秘めた少年だったことから、野性的本能が強く出るタイプだったのかもしれませんね。だから、タイタンつぐみと交流できたのだと思います。

ラムファードと並んで好きなのが、サロです。名前こそちょいちょい出てたけど、実際に登場するのは後半です。それなのに、サロはとても印象深いキャラクターです。目が3個、足も3個とか書いてるから、土星人かなにかだと思ってたら、まさかの機械。でも、機械だったからこそ、感情の豊かさがより深く伝わってきます。ラムファードの機嫌を少しでも損ねまいとしてるのに、足の音をどうしても鳴らしてしまうとことか可愛いですよね~。サロがいたことで、飄々としていたラムファードの人間らしいところも引き出されたし、そういう意味においても欠かせないキャラの一人と言えます。上記したけど、ずっと長い間破らなかった掟を愛のために破り、メッセージを伝えにいくところとか完全にヒロインじゃないですか。もしくは、主人公。コンスタントを地球に連れていくときに催眠をかけてあげるところも、優しさに溢れてて好き。とにかく健気で可愛いんだよな。サロ…幸せになってくれ…。

 

この本の感想を一言でいうなら、面白い!これに尽きる。これぞSFって感じの作品だと思いました。読んでよかった~。P-MODELの「時間等曲率漏斗館へようこそ」という曲の元ネタだと聞いたので、読後に改めて聴いてみたんですけど、やっぱり歌詞は分かりませんでした。捻出するクロノなチップは、っぽいなあってくらいです。まだ、参考資料を集めきれていないのかもしれませんね。

もし、運命が決まっていたらどう思うかに対する回答をしていませんでしたね。すっかり忘れてた。私の答えは、単純明快。それはそれで面白い。これです。ネタバレされても大丈夫な性質だし、全く不規則、不合理に見える人間の行動が実はパターン化されていたとか面白くないですか。別に望んでもない命なので(決して悪い意味ではない)、運命が決まっていて、それが告げられたとしても、私の生きる意味や価値が無くなるというようなことは起きないと思いますね。そもそも、人間の生きる意味や価値なんぞ存在しないでしょうけど。まあ、そういうことです。運命も大したものではありません。

これも例に漏れずエスから薦められた本なんですけど、本を返すときにあえて読んでないを選択したら、本の概要をさらっと説明されただけで終わってしまいました。悲しい…。読み終わってからの問答が楽しみだったのに…。また、本の名前が上がることを期待して、新しい本を選びました。円城塔Self-Reference ENGINEです。名前は、聞いたことあるのですが、読んだことはないので楽しみですね。そういえば、エスはどうしてSFしか薦めて来ないんだろうと思っていたら、ハヤカワ文庫とのコラボでSF作品を提供してるからなんですね。SFは好きな方なので、どんどん薦めてもらえればと思います。

 

長い! これまでのブログ記事で最長になってしまいました。現段階で、3299文字ですか。数字打つ度に増えるから正確に数えられないじゃないか!  途中で書き足したので分からなくなってしまいました。とにかく、いつも以上の文章量になってます。原稿用紙10枚分くらいありますね。昔は、読書感想文の原稿用紙2枚が死ぬほど大変だったのに、今ではこんなになるまで…。まあ、形式ばったものじゃないし、推敲もせずにずらずら書いてるだけだから大した文章じゃないけどね。こうやってコンテンツに触れて思ったことや考えたことを吐き出せるのは、なかなか面白いことだと思います。これからも続けていきたいし、皆さんにもおすすめしたいですね。

これ書いてるの深夜の2時ですよ。死ぬほど眠いですね。それでは、単時点的な意味において、おやすみなさい。

 

今日のご飯 ヒレカツ定食