裏切りのサーカス、見えざる魔力

おはようございます。傘使うほどじゃないけど雨降ってるみたいな天気嫌い。

 

今日は、裏切りのサーカスを見ました。邦題から受けた印象は、スパイが華麗なアクションで魅せてくれる系の映画だったんですけどね。全く違います。とても静かに物語が進み、終始重苦しい雰囲気の漂う硬派な映画でございました。スパイ映画自体あんまり見てないから、硬派と軟派の区別ができないということは秘密にしておきましょう。例によってネタバレがあることを言い忘れてました。あります。ネタバレ。

この映画、とにかく説明が少ない。名前と顔が一致してないのにストーリーが進行していくもんですから、大変困りました。いつの間にか場面転換してたり、いきなり回想が入ったりトリッキーな作品です。あと、ホモセクシュアルも一つのキーワードになってるにも関わらず、作中でそれを匂わすシーンが分かりにくい。ヘイドンとプリドーは、このキーワードを知ってるか知ってないかでかなり見方が変わるのではないかと思います。私がボーっと見ていたせいかも知れませんが、二人の関係に気づかないままエンディングを迎えて? となってしまいました。意図的に分かりにくい作りにしてるんでしょうね。

 

話も分かりにくく、派手な画も無いとなると、とても退屈そうな印象を受けます。しかし、本作はそうではありません。私でも知ってる名優が、ずっと画面に映ってるんですよ。コリン・ファースかっこいい~とか、ベネディクト・カンバーバッチ素敵~と思いながら観るのも案外悪くないと思いますね。初見では、どうあがいても頭に入ってくる情報量に限界あります。一回目である程度内容を掴んだ後、二回目でじっくり楽しむ方が理にかなってます。まあ、私はまだ二回目見てないけどね。

個人的に意識しながら見たところは、カメラのピントです。ピントを合わせたり、ずらしたりすることで視点誘導の役割を担っていると何かの動画で見てから、そのことを意識して映画を追っていました。特に、チェスの駒のシーンなんかは分かりやすいですね。何気なく見ている映像にも動きがあって、視線をどういう風に動かせば、ここは重要なポイントだなと観客に意識させるか考えるものなのかな。私は、映像制作に関わったことが無いから分からないけど。

あと、小物に注目する箇所が多かったように思います。具体的には、木片、ライター、駒、メガネ。急にシーンが切り替わって時間軸が分からなくなったときの目安だったり、重要なアイテムだったりと小物の用途は幅広いです。小物が、現行のシーンの説明をしているんですね~。初見じゃなかなか気づかない。メガネの柄のとこなんか、ただのオープニングぐらいにしか思ってなかった…。やられました。

 

本作の初見の感想は、雰囲気を楽しむ映画だと言わざるを得ないですね。ある程度、映画経験値が無いと置いてけぼりを食らってしまいます。渋くてかっこいい俳優と風景の織り成す、痺れるような重みのある空気を楽しむのが適当ではないでしょうか。二回目は、解説サイトを参照して、このシーンにはそういう意図が含まれていたのかという気付きを得る。そうした楽しみ方をする映画のように思われます。

とはいえ、同じ映画を同じ週に見るのは私の主義に反するので、ちょうどいい頃合いにまた見たいと思っています。解説サイトに関しては、記憶が薄れないうちに見たいから、今のうちに見ます。いや、もう見てます。

 

それにしても、本作は今まで見た映画の中では、異質な部類に当たると思います。銀のナイフで皮膚を切って、そこから血が流れているのを見てるかのようなスピードで進んでいく作品って感じですね。(?)  派手な画や音楽が無く、盛り上がるストーリーでなくても満足感の得られる映画があるとは知らなかった。またしても、映画から知見を得てしまいました。喜ばしい事です。

あ、サーカスの意味が全然違うとこも一種の裏切りでした。私もそれに便乗して、誤解されるようなタイトルにしてしまいましょう。分かる人には分かるって便利な言葉ですよね。

 

今日のご飯 麻婆茄子