後:止まりだしたら走らない 感想

おはようございます。雨の日って外が小汚く見えるから好きになれない。

 

昨日の続き。今回で「止まりだしたら走らない」の感想を終わらせようと思います。嘘じゃない。私は今まで嘘ついたことないんだ。以下ネタバレ。

 

 

 

 

 

 

やっぱり、東京では人がよく飛び込むものなんでしょうか。休憩室の上司は9回も遺体処理をやったことがあるらしいですけど、運がないにもほどがありますよね。私はまだ生の死体を見たことありませんが、みなさんどうですか? 死体、見たことありますか? 声高らかにあるって言われてもそれはそれで困っちゃうので、この質問はなかったことにしましょう。今飛び込んだら死ぬのかな~という単純な好奇心みたいなものがチラつく経験があるのですが、あれ侵入思考って名前がついてるらしいですよ。そういったものではなく、確かな意志を持って飛び込む人が東京に何人もいるってことがすごいですよね。なんて罪深い街なんだ。

田舎では、電車に飛び込んで死のうなんて考える人はあまりいないと思います。電車の速度めっちゃ遅いから。田舎の電車に当たって死ぬ景色が思い浮かばないんですよ。ここらへんは、東京の人とは違うかもしれませんね。田舎は、電車より車の方が何倍も危ないんですよ。死神に憑かれそうな人間が死神になるんです。狭い路地でスピード出したまま曲がったり、直線より先に曲がろうとしたり恐ろしいですよほんと。そういった輩と比べると、電車の運転手は遥かに信用できますよね。乗り物が違うだけで、どうして良識に差があると思ってしまうんでしょうか。不思議。

カレーを食う、食えない上司がなかなかいい味出してますよね。こういうのらりくらりとした上司に会ってみたいものです。今まで、自分より上の立場の人間にはいい思い出がないんですよね私。いい加減、尊敬できる大人に会いたい。不謹慎なジョークは、さすがに遠慮願いたいけど。

 

八年目の異邦人、習慣や癖のお話。それと外国人あるある。これは自分だけだろと思わずにいられない癖とかないから、そういう癖がある人が羨ましい。面白い人ってのは、大体変な癖を持ってるもんなんですよ。きっと。だから、私も変な癖が欲しい。誰か分けてくれないかな。仮に、変な癖を持っていたとして、それを他人に指摘されたらどうだろう。私は若干ムッとする可能性が高い。非常に。……やっぱ変な癖いらねー。残念ながら、癖・習慣の部門では割とまとも判定になってしまいそうです。

この話で思い出したんですけど、外国人に日本の凄い(と思われそうな)こととかを褒めさせる系のツイートや番組とかが苦手なんですよ。珍しく友人とも意見が合うくらいだから、これは共感できる人いるんじゃない? まあ、共感に意味なんてないけど。他者からの評価自体は大変ありがたいものだと思いますけど、自分から聞いたり、外国人に自分の感想を言わせようとしたりするのは奥ゆかしさが足りてないですよねえ。自分の欲しい評価を相手に迫るのは、なんていうか浅ましく思えてなりません。あれ系なくならないかな。

環境に合わせて身についた習慣ってのも、これまた特に持ってないな。あ、あるある! 風呂の時間が夜から朝になった。これくらい。実家が田舎すぎて薪入れて風呂焚くタイプだったので、シャワーを浴びることがほとんど無かったというか出来なかったんですよ。一人暮らし始めてからはシャワー浴び放題。風呂にかける時間も短くなったし、朝にシャワー浴びると家出る準備が整った感じがして気持ち良かったんです。それが習慣化して、今では朝派になってしまいました。良かった~エピソードあったわ。

それにしても、この下柳って後輩怖すぎますよね。完全に俺バカだからの系譜じゃん。カワイイしか言わない女子みたいな感じかと思ったら、異様に細かいところまで見てる。こんな人いたら恐怖でしかありません。君ってこういう癖あるよねって言う人がいたら、絶対警戒するでしょ。こいつ弱みを握ろうとしてるのかって思っちゃう。やっぱ忍者は観察力がずば抜けてますね。私、くノ一なんですが冗談に聞こえない。今後、異様に鋭い観察をする人は、全員忍者判定します。

 

逡巡。この話好き。文体もちょっとお高い感じになって、いろいろ考えを巡らせてるのに、そのテーマが食べたいご飯ですからね。かわいい。これに関しては、かなり心当たりがありますよ。ご飯って気分が重要ですからね。今日は麺かな~っていう日もあれば、いや今日はカレー以外ありえないって日もあります。私も昨日食べた献立となるべく被らせたくなくて色々考えるんですけど、大体松屋で落ち着いちゃうんですよ。ある程度美味しくて、なおかつお腹いっぱいになればいいやという貧乏思考の塊。何度も食べると段々味が予想できてきて、あんまり食べる気しなくなることあるよね…。そうだなあ、最近カレーが自分の中で流行ってるような気がしなくもないので、今はカレーが食べたいですね。

電車の中で何食べるか問題、これ永遠に正解が出ない問いだと思うんですよ。ただ、ところてんは不正解だと思います。間違いない。

 

藪の中。作文から子供を見てみる。昔は、作文嫌いだったなあ。授業中に作文用紙2枚とかが意外としんどくて嫌だった。書き出しが死ぬほど苦手なんですよ。正直、今でも書き出しは苦手なんだ。曲がりなりに300日も文章書き続けてるけど、全く上達の兆しが見られない。うまい文章ってなんだよ。

作文ってどうしても事実の列挙で埋まりがち。遠足とか書くことないでしょ。足が疲れる以外の感想が出てくると思うか。感想って簡単に言うけど、相当難しいですよね。事実の列挙に歯向かおうとすると、こんな風に自分語りばっかりになっちゃう。塩梅が分からないっすよね。

少なくとも、小学生で感嘆から作文を始めるやつはろくでもない。どう考えても大人の入れ知恵だろ。比喩表現なんか私ですら使いこなせないぞ。こういう大人に好まれる書き方すると、あっという間に賞とかもらえるんですよね。私ですら賞なんか…あっ! 作文で賞もらったことあったわ。読書感想文。盲導犬の本で書いた記憶があります。確か、糖尿病だった目の悪い叔父と結び付けて書いたら賞もらえたんですよ。そのころの私は、どういう文が受けるか分かってない子供だったから、賞をもらえたことを純粋に喜びました。今考えると、あれは賞を取りやすい内容に仕上がってたように思いますね。本の内容と実体験を結びつけるというのは、古くから使われる常套手段です。気づかぬ内に大人の機嫌を取ってしまった過去の自分を恥じるばかりです。そんな子供も高校生になると、ドグラ・マグラで読書感想文書くようになるんですよね。自分が憐れでならない。あまつさえ、ブログなんてやってるしな。これが拗ねらせまくった逆張り人間の末路よ。

 

夜の鳥類たち。自分を動物に例えるとしたら? って質問された時にどう答えるのが正解なんでしょうか。というか、自分に合う動物が分からないんですけど。黒沼さんに見立てて欲しいくらい。前に友人と話した時は蜘蛛って言われました。蜘蛛は個人的に合ってない気がする。とはいえ、自分じゃ思いつかないから、暫定蜘蛛でいこう。

途中で女子大生の会話が再生されるんですけど、文字通りバカの会話だ~と一人笑ってたら、自分も似たような会話しかしてないことに気づいて怖くなってしまった。まず、人の話聞いてないから、大体マジ!? かマジ? で聞いたことにしてしまう。私も同類だった。明らかに驚くような場面でもないのに、ヒエッ…って相槌打っちゃうんだよな。昔はもっと人の話聞けてたはずなんですけどね。やば~。

ハシビロコウさんのアドリブなどの本来あるはずのないところが好きみたいなの、ちょっと分かる気がする。もしかしたら意味を取り違えてるかもしれませんが、ライブの歌詞ミスとかもこれに当たったりしませんかね。皆さんご存知、平沢進も歌詞を間違えたりするので、そういうのを見るとやっぱ人間なんだなって思いますよね。あの人、機械的な印象を受けがちだから、そういう場面がなおさら光ってみえます。ライブで歌詞間違えてキャーキャー言われるの、改めて考えると謎すぎるな。

 

採点。オタクに限らず、こういう感じに振り返りをする人結構いそう。私もたまにこういう時あるけど、次の日になったら忘れちゃうからあんまり効果ないんだよね。山崎くんの失敗を見てると、オタクくんさあ…とツッコミたくなってしまう。アニメの一話切りを堂々と言うんじゃないよ。私はそれほどアニメ見るオタクじゃないから分からないけど、一話切りってマジであるものなのかな。周囲にそういうオタクいないから分からん。

恋愛シミュレーションゲームみたいに会話の選択肢があれば楽だろうなという意見には同意ですね。これ、仲良くしたい人というより、自分に合わない人の時に選択肢出して欲しい。仲いい人との会話で用意された選択肢選ぶのは、コミュニケーションの放棄だと思う。正直、仲いい人間相手だったら、多少コミュニケーションミスってもそこまで問題にならないんですよね。だから、合わない人を適当にあしらう時に最適な言葉が選べた方がまだいい。でも、合わない人間の好感度上げるの何かやだな…。

 

往復路。私の中のオタクは、この話は百合だっていってます。やばいですね。フッと思い浮かんできたのが、軽い雑談しただけの女性なんてことある? ないよね。首藤さんの性格というか雰囲気が、刺さる人に刺さる感じなのも非常に危ない。自分が一生行かないところにあの人がいたらいいなっていうのがやばい。

まあ、冗談はおいといて、実際自分が動く範囲って思った以上に狭いですよね。なんなら、今住んでる街ですら知らないとこいっぱいあるし。家からめっちゃ近い牛丼屋(チェーン店ではない)も未だに入ったことない。他県行くだけでも私の中では冒険に近いのに、海外なんて行ったらカルチャーショックで死んでしまいます。よっぽどの理由が無い限り、海外は絶対行かないです。通り魔に襲われて金奪われるのが目に見えてる。私も、白紙の一部分をなぞるばかりの人間になりそうです。

……やっぱり、これ百合なのでは?

 

 

最後に、都築くんと新渡戸先輩の話に触れて終わりですね。最初は、短編の間に挟まる小話くらいにしか思ってなかったのになあ。高尾山での先輩視点で完全にやられた。うさんくさい口調、野球の投手、下の名前からカズのあだ名をつけられていたという情報から女性だとは思わないじゃないですか。カズはマジで天才。一葉のカズなんか予想つくわけないだろ。大方、和樹とかそんな名前だと思ってたわ。名前に葉がつくと女性的な印象を受けるのは何故でしょうね。これが木だと男性的な感じがします。力強さとかいろいろ考えることはあるけど、今はそれほど大事ではない。

それにしても、叙述トリックとはやられた。アンゴルモアの話よりダメージがでかかった。先入観ってやつは恐ろしい。言われてみれば、先輩の性別は明示されてなかったんだよね。初っ端、肩を砕こうとする先輩が女性なんだもんな。そんな登場の仕方されたら、男性だと思うよ。してやられた感がすごい。悔しい~!

正直、女性と分かる前から新渡戸先輩は面白いキャラしてて好きだった。こんな先輩ほし~っていう理想の先輩像ですよ。ホームズみたいな先輩欲しくないですか? あ、いや、口調というか雰囲気のたとえですよ。探偵のホームズっていうより、もっと概念的なホームズ的先輩がいいなってこと。この説明で伝わるかな。胡散臭い人間に会いたいんですよ。掴みどころがなさそうな人。私が会ったことのある人間で、この属性に一番近いのが執行猶予付きの人なんですよね。あの人も面白かったけど、機嫌損ねたら結構危なそうだったから、もっと平和な胡散臭い人がいいな。

 

突然、他人が世界に現れるって、やっぱり皆体験するんですかね。私もこの経験ありますね。先輩ほど衝撃を受けたわけじゃないけど。普段、学校で騒がしい子が家だと結構大人しいって話を聞いた時に、ああ確かに生きてるんだなと思った記憶があります。なんていうか、これまで見えていた他人のリアリティが一気に増したような、そんな感覚だった。

他人の思考や感情って一生分からないものだけど、小説は他人の思考まで読めてしまう。これ、すごいことですよね。当たり前のように心情が語られるんですよ。言葉はいろんな解釈ができるから、行動一つでもそこにいろんな感情を読み取ることもできる。新渡戸先輩が都築くんとあるあるを語っていたときの「私は少し笑っていた」って文が良すぎて泣いちゃった。オタク構文みたいなのを使いたくなってしまうほどには、重い文ですよ。この自覚してる感じがいいですよね。ほんと。このあと都築くんの返しにがっかりする新渡戸先輩ですが、視点が変わるとこんなに表情豊かに見えるんですね。これまでの飄々とした雰囲気を醸し出してる時も、結構感情が揺れ動いたりしてたのかな。都築くんの視点だと分かりにくくなってるんですよ。つまり、そういうことなんでしょうけど。くそ。ほんと計算尽くしだな。

新渡戸先輩の独白がね、また切ないよね。先輩も罪悪感や孤独感を抱くことがあると分かってしまったのも、心苦しく感じる。みやま橋で拒絶するのは、アプローチをしてほしいてのもあると思うけど、ここを渡ったらもう何もかも終わってしまうという恐れもあったんじゃないかな。ただ、ここでいきなり都築くんが男を見せるんですよね。都築お前…。最後の山登りの問答に関しては、もう何も言いたくない。このまま二人の時が止まってくれと願うばかり。物語が終わった後って、登場人物がどうなるかみたいな想像するよね。するよね。するんですけど、今回は無理だった。最後が良すぎる。ずっと、時を凍らせたままにしておきたいと思ったよ。この後、どうなるかなんて怖くて考えられない。これを書くにあたって繰り返し見てるんだけど、そのたびにダメージ受けちゃう。短編集でこんなことしやがって。作者はきっと性格が悪いに違いない。

 

 

 

……要するに、めちゃくちゃ面白い小説だった。私みたいな人間に刺さる小説です。文章読むの面白いなって久々に思いました。まさか、こんなに感想が長くなるとは思わんかったな。これ、しばらくブログ更新しなくてもいいんじゃないかな。自分でも、この熱量に驚いてる。いや~良かったな。うん。いろいろ書きまくったけど、エゴサでひっかかることもないだろうし大丈夫だよね。エゴサしてもツイッターくらいでしょ。よし、許された! 

これは名称未設定ファイルも楽しみになってきましたね。さすがに、今回みたいな不意打ちはないと思いますけど、何かしら仕掛けてきそうで怖いな。でも、次に読むのは違う本なんだ。夏への扉っていうSF小説。そう、またSF小説エスが薦める本は一応全部読んでおきたい。ところで、話変わるんですけど、今Chromeが落ちて死ぬほど焦りました。バックアップが無かったら即死だった。ほんとヒヤヒヤするな。こういうとき、個人ブログが死ぬほど頼りになる。ありがてえ。

 

またChromeがクラッシュしたら、次こそ心臓麻痺を起こして死にそうなのでそろそろ終わります。長丁場になりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。まあ、これ見てる人なんていないんだけど。この本の感想書くためにブログやってきたまであるな。それぐらいのレベルで書きました。ヒラサワ関係もこれくらいの熱を持って、何か書いてみたいですね。ユング心理学錬金術から見るヒラサワの歌詞についてとか面白そうなテーマだと思いませんか。まあ、識者の二番煎じになること間違いなしですけど。そろそろ本当に終わろうと思います。ありがとうございました。それでは、みなさんさようなら。

 

今日のご飯 チーズ焼豚丼