ハーモニー、わたしだけの意識

おはようございます。蒸し暑すぎる。

 

伊藤計劃「ハーモニー」読了です。面白かった~。グランヴァカンスと比べると、かなり読みやすくてサクサク読めた気がする。とはいえ、相変わらず知らない単語や表現がわんさか出てきました。おかげで私専用の辞書が、さらに分厚くなっていきます。あ、感想書くんでネタバレがあります。読んでない方はお帰りください。出口はあちらです。

前回に引き続きSFものの小説です。AIではなく生身の人間がメインでした。キャラの名前が独特なのに微妙に似てるから、この子どっちだったっけと一瞬悩んだり悩まなかったり。キアンとトァンがずっとごっちゃになってました。本作のキャラクターも、なかなかに個性的で良かった。ヌァザの思想家らしいところやキアンの腰巾着感が、トァンの一人称視点によって少し誇張されて見えるのが面白いですね。キアンに関しては、最初に抱いたイメージを180度ひっくり返されることになりますが。

ヌァザが、デッドメディアから得た知識を得意気に披露するシーンが何度かあります。私も、知らないことばかりだったので、参考になるなあとか思ってたんですけど、たまにわざとらしいなと感じることもありましたね。若干メタいような気がするというか、これあんまりやられると作者の影が見えちゃう。まあでも、個人的にこれ以上はくどくなるってラインには到達しなかったので安心しました。

トァンがヌァザに対して、敬愛の念を抱いていたり、私は彼女のドッペルゲンガーなんだと意識したりするところに若干百合の波動を感じそうになりました。あまり、そういう目で見てはだめだ~と思って、頭から振り払いながら読んでましたね。最終的には、三人とも死んだに等しい終わりで悲しくなってしまった。別の時間軸では、なかよく昼飯食べたり、本を一緒に読んだりしててほし~。三人であの社会から脱出成功するエンドが見たかった…。

 

SF小説としては、舞台設定とかにも触れていかねばなりません。政府ならぬ生府によって健康を管理されまくるという、健康志向が振り切れすぎた社会が舞台です。これあってるよね? 体内にナノマシンを入れて、健康管理をしてもらうのは便利っちゃ便利そうですけどね。ただ、お菓子食べたり油っこいもの食べる時にごちゃごちゃ言われたらやだな。

拡張現実もSFではよくある感じの設定ですね。SFあんまり知らないから適当なことしか言えない。プライバシーという概念が消え失せて、あらゆる人や物の評価が映し出されるとかなんて残酷な社会なんでしょうか。私なら、2.6くらいの評価になるのかな。うわ~嫌だなあ。人が公共のリソース扱いも、まあまあ嫌ですけど、だからといって勝手に評価付けされちゃたまったもんじゃないですよ。そんな未来は勘弁願いたい。

物語の後半に出てくる、六本脚くんの説明がいかにもサイボーグの獣って感じでワクワクしました。多分、めちゃくちゃ可愛いですよきっと。メタルギアソリッドライジングのワンちゃんを思い出しました。いいよね。

そうそう、本作はいたるところにソースコードっぽい表現があるんですけど、これがまた粋な演出なんですよ。本を通して、オーグを体験させてるんです。わざわざ感情表現まで書いて、えらく親切だなと思ってましたが、いや~策士ですね。これ分かった時の感動が半端なかった。

 

自身の体を外注して、次は意識すら手放すとかいうなかなか恐ろしい世界が誕生してしまう…。自分の意識が無いなんて死と同義だと作中で触れていましたが、全くその通りだと思いますね。人間なんて不合理が皮を被って歩いてるようなもんじゃないですか。それが、完全になってしまったら人間でいる意味すらないですよ。これに関しては、真・女神転生3のコトワリ、シジマを想起しました。個を失い、社会のシステムと融合するという点が似てる気がします。どちらも、人間である必要がないんですよね。たとえ、脳の報酬系云々で行動を決めてるとしても、この体の主導権自体は私が握ってるだから、それすら手放してNPCになったらもうゲームオーバーです。私は、あくまで私の意識と共に生き、共に死にたいですね。

 

ハーモニーには、文字を通して、非常に面白い世界を体験させてもらいました。ちょっと調べたのですが、なんと映画とコミカライズ版があるらしいじゃないですか! 計画は頓挫したらしいですが、百合姫でコミカライズの予定もあったとか。やっぱり、私が感じた百合の波動は間違いじゃなかったようですね。これは、しっかりチェックしなければ…。

 

エスに読破報告をしたので、次の本を指定してもらいました。タイタンの妖女という本です。これまたSFだね。エスさん、SF好きなのかな。円城塔の作品もチラッと名前が見えたし、そういうことなんでしょう。

まあまあ長くなってしまいましたが、これでハーモニーの感想は終わりです。やっぱ本読むの面白い。

 

今日のご飯 カルボナーラ