ミリオンダラー・ベイビー、問いかける尊厳

おはようございます。このまま晴れの日が続いてくれ…。

 

今日は、ミリオンダラー・ベイビーを見ました。この映画を見る前に結末のネタバレを聞かされていたのですが、それでもかなり印象に残る映画になりました。これから映画の感想を書くにあたってネタバレをすることになるので、これを見る前に(見る人いないだろうけど)是非ご自身の目で映画を見ていただければと思います。

 

まず、キャラクターから感想をつらつら書いていきます。マギーは、貧困層の生まれです。ウェイトレスとして働き、客の食べ残しをこっそり持って帰るというシーンが、彼女がどういう風に育ってきたかを印象付けるところです。この時点で、結構辛くなってきました。スピードボールだったかな。あれを買う時に、紙幣や小銭をぐちゃぐちゃに出していたのも何だかなあって気持ちになりましたね。いっぱい稼いでも浪費せず、家を買ったかと思えば、自分の家ではなく親の家! 孝行娘の域を越えてますよ。もっと贅沢してもよかったんだぞ~。

本人は、ガッツがあっていい子なのに親がゴミすぎる。何なんだあれは。絵にかいたようなクズでびっくりしましたよ。娘の顔に傷がついてるのに、お前は笑いものだとか普通言うかね。病院のシーンでしっかり言い返されてたから、まあ良しとしてやろう。ただ、母さんは変わったとマギーが言っていたので、昔はもっとまともだったのかもしれませんね。

マギーがぽつぽつと語った犬の話は、確実に伏線だろうなと思っていたら案の定でした。ネタバレを食らっていたので、すぐそれに照らしあわせてしまいましたね。亡き父とフランキーを重ねて見ていたからこそ、父が犬を殺したように自分も殺して欲しいと言ったのかもしれません。あくまで、フランキーが直接手を下すことがマギーの幸せに繋がる。これほど皮肉なものはないですよね。マギー…。

 

次は、フランキーです。こちらはこちらで、娘と関係がこじれてしまっています。マギーとフランキーが、互いに足りないものを補う形で親子の愛を育んでいく流れは、非常に美しいです。モ クシュラに込められた意味があまりにも大きすぎる。最初は、あれだけマギーを拒んでいたのに、最終的には我が子同然という関係になるとは思いませんでしたね。ウィリーには逃げられちゃったけど、マギーはついてきてくれるという対比も良かったなあ。二人は、血こそ繋がっていないものの、家族のような深い絆に結ばれていました。

それゆえ、我が子同然のマギーを自ら手にかけることへの苦悩や葛藤が彼に重くのしかかってくるわけです。できることなら生きてほしいというフランキーの想いと、栄光を掴み誇りを持ったまま死にたいというマギーの願いは、どちらも分かるんですよね。自分なら、マギーの願いを叶えると思います。ただ、フランキーが神父に相談していたように、どのようなことであれ人を殺めてしまうことは大罪なんですよね。ここの価値観は、カトリックか否かで受ける印象が変わってくるのかなと思います。結局、フランキーは罪を永遠に背負い続ける道を選びました。いくら人を故意に殺めたとしても、マギーの願いに真正面から応えたフランキーを非難する気にはなれません。フランキー…。

 

スクラップも本作において重要な役割を担っています。なぜ、語り部がスクラップの声なのかという疑問を抱くようになると思うのですが、これに関してはなるほどと頷ける理由でした。スクラップが、マギーを気にかけてやらなかったら本編は始まらなかったといっても過言ではないですから、彼の功績は大きいですね。それに、デンジャーという新たなボクサーも発掘してるから、なかなかの目利きといえそうです。個人的に印象に残ってるシーンは、病院でフランキーがスクラップに八つ当たりするところです。誰も悪くないのに、つい怒りの矛先を向けてしまったフランキーに対して、強く言い返すわけでもなく静かに受け止めるところに彼の優しさを感じました。

スクラップつながりで、デンジャーも印象深いキャラクターになっています。終盤になるまではおかしなやつ止まりだったのに、一度敗北を経験して帰ってきてからはハートの強い男になれました。デンジャーくんには、頑張ってボクシング続けてほしいですね。

 

キャラクターだけで言いたいことの9割を書いてしまった感ありますが、映像などについても多少触れたいと思います。まず、暗い。それと、全体的に彩度が低いのかなという印象をうけました。ジムや病院は暗く感じる一方、リングはめちゃくちゃに明るい。歓声や色合いから、その場の勢いや熱気が伝わってくる感じ。

音楽は、流れたシーンが少なかったように思います。ずっとセリフを聴いていた印象。そんなに、音楽が必要な映画でもないと思うので、特に気にならなかったです。

2004年の作品だったのか。ちょっと古いなとは思ってましたが、思ってた以上に古い作品でしたね。映画好きからしたら15年は大したことないかもしれないけど、私は十分古いと思います。こういう映画が不朽の名作と言われるってことか。

 

本作では、尊厳死を中心に重いテーマを扱っています。私は、カトリックではないので、そこらへんは分かりません。ただ、宗教が思ったより解決策として弱そうな感じだったから、批判されそうとは思いました。アメリカの映画なら、神の意に背いちゃいけないから生かそう!って流れになりそうなもんですけどね。そういうところも含めて、考えさせられる作品でした。惜しむらくは、ネタバレを食らったこと。それだけです。

 

いつも以上にまとまりのない文章に仕上がってしまいました。終盤は、ほんとに見てて辛かったし涙も止まらんかった。けど、本当にいい映画です。良い映画だけど、手放しでおすすめするのはちょっと躊躇われます。見終わったあと、やるせなさでいっぱいになります。ある程度、しんどい映画だという情報くらいは知っておいた方がいいかもしれない。

私や他の人が死ぬときは、本人の意思を尊重したいと思います。

 

今日のご飯 カツカレー